
新商品開発のアンケート、聞くべき項目は?質問例とAIで検証を前倒しする方法
2026.9.7公開
株式会社Laboro.AI 執行役員CBO(最高ブランディング責任者) 和田 崇
株式会社Laboro.AI編集部
概要
新商品の企画が固まってくると、「アンケートを取って裏付けを取ろう」という話が必ずと言っていいほど出てきます。しかし、いざ調査票を作ろうとすると、「何を聞けば新商品の判断材料になるのか」「関係部署の聞きたいことを詰め込みすぎていないか」という壁にぶつかる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、新商品開発のアンケートで押さえておきたい5つの質問項目を、具体的な質問例とあわせて解説します。あわせて、失敗しやすい設問設計のパターンや回収率を高める工夫、そして自分たちで調査票を作るべきか、他の手段に頼るべきかの判断材料もお伝えします。
後半では、私たちLaboro.AIが提供するAI市場調査サービス「未来リサーチ」の知見をもとに、AIで検証を前倒しできる項目とそうでない項目についても触れていきます。
目 次
・新商品開発でアンケートを実施する目的
・【質問例文付き】新商品アンケートに含めるべき5つの質問項目
・失敗しやすいアンケート設計のパターンと回避策
・回収率を高める設計のコツ(設問数・回答時間・選択肢設計)
・5つの質問、すべてを「同じタイミング」で人に聞く必要はない
・自作アンケートとAI市場調査、どちらを選ぶべきか
・まとめ:成果を出す調査設計のポイント
新商品開発でアンケートを実施する目的
アンケートの項目を考える前にまずやるべきなのは、設問を書き始めることではなく、「この調査結果が出たら、誰が何を判断するのか」を決めることです。同じ新商品のアンケートでも、コンセプトの筋の良さを確かめたいのか、発売後の手応えを確認したいのかによって、聞くべき項目は変わってきます。目的が曖昧なまま項目を集めると、関係部署の「聞きたいこと」がそのまま設問数に反映され、回答者の負担ばかりが増えてしまいます。
判断に使わない項目は思い切って外し、結果が出たときに次のアクションへつながる項目だけを残すことが、実務的な調査票の条件だといえるでしょう。
商品調査と市場調査の違い
新商品のアンケートを指して「商品調査」と呼ぶ場合と、「市場調査(マーケティングリサーチ)」と呼ぶ場合がありますが、この2つは目的も設問設計も異なります。
商品調査は、自社が開発している特定の商品やコンセプトを対象に、購入意向や満足度など「その商品に対する評価」を聞くものです。一方の市場調査は、特定の商品に限らず、市場規模や競合の動向、消費者トレンドなど「市場そのもの」を理解するために行われます。新商品開発では両方が必要になる場面がありますが、商品調査は「この商品をどうするか」を判断するための調査、市場調査は「そもそもどの市場を狙うか」を判断するための調査と整理しておくと、設問設計で迷いにくくなります。
市場調査の具体的な手法やAI活用については、別記事「マーケティング調査とは?基礎知識・代表的な手法と、自社に合った進め方の選び方」で詳しく解説しています。
【質問例文付き】新商品アンケートに含めるべき5つの質問項目
新商品開発のアンケートで押さえておきたい質問項目は、大きく5つに整理できます。以下の表は、それぞれの質問例と、何のために聞くのかをまとめたものです。
| 質問カテゴリ | 質問例 | 何のために聞くか |
|---|---|---|
| 属性 | 「あなたの年齢・性別・ご家族構成を教えてください」 | 誰に向いている商品かをセグメント別に見極めるため |
| 購入経験・頻度 | 「このカテゴリの商品を、直近1年でどのくらいの頻度で購入していますか」 | カテゴリへの関与度を把握し、ヘビーユーザーとライトユーザーで反応の違いを比較するため |
| 購入理由・きっかけ | 「(本商品や類似商品を)購入する際、最も重視する点は何ですか」 | 訴求すべきポイントと、競合との差別化軸を見極めるため |
| 満足度・改善点 | 「今回のコンセプト(試作品)にどの程度満足しましたか」「改善してほしい点があれば教えてください」 | 期待と実物・実案とのギャップを把握し、仕様や訴求の見直し材料にするため |
| 購入意向 | 「この商品が発売されたら、購入したいと思いますか」 | 発売の可否を判断するコア指標にするため |
この5項目をすべて毎回同じ重みで聞く必要はありません。コンセプト評価の段階であれば購入意向や購入理由・きっかけを厚めに、発売後の手応えを測る段階であれば購入経験・頻度や満足度・改善点を厚めに聞く、というように、調査のタイミングに応じて配分を変えるのが実務的です。
なお購入意向は、「非常に購入したい」から「まったく購入したくない」までの5段階で聴取し、上位2つの回答の合計(トップ2ボックス)を判断指標にする方法が広く使われています。
属性項目についても一点補足しておきたいことがあります。性別・年代・家族構成などを漫然と聞くのではなく、「この項目の回答結果を、どのセグメント分析に使うのか」を先に決めておくことが重要です。たとえば「子育て世帯かどうかで購入意向に差が出るはずだ」という仮説があるなら、その仮説を検証できる粒度で属性を聞く必要がありますし、仮説がないまま聞いても、後で集計軸として使われないまま埋もれてしまいがちです。購入理由・きっかけについても、選択肢形式にする場合は「価格」「デザイン」「機能」といった粒度をあらかじめ商品の特徴に合わせて設計し、どの選択肢にも当てはまらない回答者のために自由記述の「その他」を用意しておくと、集計時に取りこぼしが減ります。
失敗しやすいアンケート設計のパターンと回避策
質問項目が決まっても、設問文の書き方次第で得られるデータの質は大きく変わります。
- 誘導質問:「環境に配慮したこの商品を購入したいですか」のように、設問文に肯定的な評価をあらかじめ埋め込んでしまうパターンです。回答は実際より好意的な方向に歪んでしまうため、事実だけを淡々と提示し、評価は回答者に委ねる書き方が原則です。
- ダブルバーレル:一つの設問で二つのことを同時に聞いてしまうパターンです。「デザインと価格に満足していますか」と聞かれた回答者は、デザインには満足だが価格には不満、という場合に答えようがなく、集まったデータも解釈できません。一つの設問で確認することは一つに絞りましょう。
- 尺度の不統一:設問によって5段階と7段階が混在したり、「満足」の方向が左右で入れ替わったりするパターンです。回答者の勘違いを招くため、尺度は調査全体で統一し、過去の調査と比較する予定があるなら、同じ尺度・同じ文言を踏襲することが比較可能性の条件になります。
- 社内目線の表現:社内で当たり前に使っている略称や開発コード名を、そのまま設問文に使ってしまうパターンです。回答者は商品開発の背景を知らないため、「本商品のコンセプトであるA案について」のような社内向けの表現では意図が伝わりません。誰が読んでも同じ前提で答えられる言葉に置き換えることが、回答のばらつきを減らします。
いずれのパターンも、作成者自身は気づきにくいという共通点があります。完成した調査票は、配信前に必ず第三者にテスト回答してもらうことも忘れないようにしましょう。作成者には自明に見える表現が、回答者にはうまく伝わらないことは珍しくありません。
回収率を高める設計のコツ(設問数・回答時間・選択肢設計)
回収率と回答の質を左右する最大の要因は、回答者にとっての負担の大きさです。判断に使わない項目まで盛り込んで設問数を増やしすぎると、後半の設問ほど回答が雑になりやすく、途中離脱の原因にもなります。まずは「この項目の結果が出たら誰がどう動くのか」に答えられる項目だけを残し、設問数を絞り込むことが基本です。
回答形式の選び方も設計の一部です。購入意向や満足度のように程度を測る項目は5段階などの尺度形式、認知経路や購入理由のように該当するものを選んでもらう項目は選択肢形式(単一選択か複数選択かを明示)、理由や改善要望を深く知りたい項目は自由回答形式が基本の組み合わせになります。
ただし自由回答は回答者の負荷が高いため、本当に生の声が必要な設問に絞って使うのが実務的です。同じ尺度の設問が続く場合はマトリクス形式でまとめると回答しやすくなりますが、行数が多すぎるとかえって機械的な回答を誘発するため、1画面あたりの分量にも配慮が必要です。
配信環境への配慮も回収率に直結します。近年はスマートフォンから回答する人が多数派になっているため、パソコン画面での見え方だけを確認して配信すると、スマートフォンでは選択肢が折り返されて読みにくい、といった事態が起こりがちです。あわせて、「全◯問中◯問目」のような進捗表示を入れておくと、回答者が残りの分量を把握でき、途中離脱を防ぐ効果が期待できます。属性項目など答えやすい設問を冒頭に配置し、負荷の高い自由回答は後半にまとめる、という並び順の工夫も、最後まで回答してもらうための基本的な考え方です。
5つの質問、すべてを「同じタイミング」で人に聞く必要はない
ここからは、私たちLaboro.AIが、生成AI・LLM(大規模言語モデル)を用いた市場調査サービス「未来リサーチ」を提供する立場から見えてきた視点をお話しします。
先ほどの5項目を見返すと、実はすべてが同じ性質の質問ではないことに気づきます。属性・購入経験・頻度・満足度・改善点は、いずれも「実際にその商品を使った・買った」という現実の経験に基づく質問です。
一方で購入意向は、「もし発売されたら買うか」という、まだ起きていないことへの意向を尋ねる質問です。私たちが技術検証を重ねる中でわかってきたのは、この違いがAIによる代替のしやすさをそのまま左右するということです。
実際に触れる・食べる・使うといった体験を伴う満足度や、過去の購入回数のような実体験の記録は、現時点のAIシミュレーション調査では再現が難しい領域です。一方、不特定多数の仮想消費者に対して「発売されたら買いたいか」という意向・選好を問う購入意向のような質問は、AIとの相性が高い領域だといえます。購入理由・きっかけについても、まだ発売していないコンセプトに対して「魅力を感じる要素」の仮説を検証する目的であれば、AIシミュレーション調査で一定程度先読みできる可能性があります。
私たちが提供する「未来リサーチ」は、生成AI・LLMの推論力を用いて仮想的に消費者の反応・回答を再現する定量調査サービスです。大手小売企業様との共同検証では、全国1,000名規模を想定した商品コンセプト調査を仮想実施し、446商品分の実査結果と比較したところ、平均誤差2.24%、判定精度92.4%という結果が得られています。

つまり、コンセプト評価段階の購入意向であれば、実際にアンケートを配信する前に、AIによる仮想調査である程度の手応えを先読みできるということです。その分、本当にリアルな回答者でなければ測れない発売後の満足度や改善点の調査に、限られた時間と予算を集中させる、という順番で考えることができます。
【参考】大手企業との共同検証結果
なお、商品開発・商品企画のプロセス全体でAIがどこまで代替できるかについては、別記事「商品開発・商品企画にAIをどう活用する?市場調査を軸にした実践アプローチ」でより詳しく整理していますので、プロセス全体の設計に関心のある方はあわせてご覧ください。
| 質問カテゴリ | AIシミュレーション調査との相性 |
|---|---|
| 属性 | △(回答項目ではなく、仮想調査の対象条件として設定する) |
| 購入経験・頻度 | △(実際の購買履歴の記録であり、AIでの再現は難しい。回答項目ではなく、仮想調査の対象条件として設定するのはOK) |
| 購入理由・きっかけ | △〜○(コンセプト段階の仮説検証であれば一定程度先読み可能) |
| 満足度・改善点 | ×(実際に使った体験が前提のため、AIでの再現は難しい) |
| 購入意向 | ○(意向・選好を問う質問であり、最もAIとの相性が高い) |
自作アンケートとAI市場調査、どちらを選ぶべきか
ここまで見てきたように、新商品アンケートで聞くべき5項目は、それぞれ性質の異なる質問です。実務では、「自分たちでアンケートフォームを作って配信する」「調査会社に外部委託する」「AIシミュレーション調査を活用する」という3つの選択肢を、目的や項目の性質に応じて使い分けることになります。それぞれのメリット・留意点や判断基準については、別記事「マーケティング調査とは?基本の手法から、AIで変わる調査の未来まで解説」で詳しく整理していますので、そちらもあわせてご参照ください。
今回のテーマに即していえば、コンセプト評価段階で複数案の購入意向を素早く比較したい場合はAIシミュレーション調査、実際に商品を使ってもらった上での満足度や改善点を知りたい場合は自作のアンケートフォームや外部委託による実査、というように、聞きたい項目の性質に合わせて手段を選ぶ考え方が実務的です。すべてを一つの手段でまかなおうとせず、5項目のうちどれを・いつ・誰に聞くのかを先に整理しておくことが、結果的に回り道の少ない調査設計につながります。
まとめ:成果を出す調査設計のポイント
新商品開発のアンケートで押さえるべきは、属性・購入経験・頻度・購入理由・きっかけ・満足度・改善点・購入意向という5つの質問項目です。誘導質問やダブルバーレルを避けた設問文で、目的に応じて項目の重みを調整しながら設計することが、判断に使えるデータを集める基本になります。そして、5項目の中には「実際に使った経験が前提の項目」と「まだ起きていないことへの意向を問う項目」が混在しており、後者についてはAIシミュレーション調査で検証を前倒しできる可能性がある、という視点も、調査全体の設計を考えるうえでの一つの選択肢になるのではないでしょうか。
私たちLaboro.AIが提供する「未来リサーチ」では、AI・調査に精通した専任の「AIリサーチャー」が調査設計から分析・レポーティングまで伴走します。アンケート項目を自分たちだけで設計しきれるか不安な方や、コンセプト評価にかけられる時間・予算に制約がある方は、選択肢の一つとして「未来リサーチ」にも触れてみていただければ幸いです。
AIシミュレーション調査に関心をお持ちの方へ

Laboro.AIが提供する「未来リサーチ」は、LLMの高度な推論力を用いて仮想的に消費者の反応を再現するAIシミュレーション調査サービスです。専門AIリサーチャーが設計〜レポートまで伴走支援するため、操作不要で本格的な定量調査を短納期・低コストで実施できます。まずはサービス詳細ページでご確認ください。
執筆者
Laboro.AI編集部
株式会社Laboro.AIの独自技術や最新のAIに関する情報をお届けします。
監修
執行役員CBO(最高ブランディング責任者) 和田 崇
立教大学大学院経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科博士後期課程中退。KDDI株式会社に入社、コンシューマ向け商品・サービスのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わったのち、全国漁業協同組合連合会を経て、2019年にLaboro.AIに参画。マーケティング/ブランディング業務に従事する傍ら、NewsPicksプロピッカーとして活動するほか、日経クロストレンドなどメディア寄稿多数。